「ドミニク級」。

 

 私が小学校上学年の頃、週刊少年ジャンプが流行り始めた。クラスの皆は「GOシュート」やら「リングにかけろ」やら「リッキータイフーン」やら始まったばかりの「Dr.スランプ」に夢中だった。その中でも江口寿史の「すすめ!パイレーツ」と2本柱を形成するのが寺沢武一の「コブラ」であった。とにかく少年誌にあって超異色の作品。アメリカンコミックの様なペンタッチで陰影の強い画風。SFとしての質の高さ。ハードボイルド小説のような洒落たジョーク混じりの台詞。コブラの左腕に隠された「サイコガン」の格好良さ。相棒のアーマロイド「レディ」のアンドロイドなのに色っぽいデザイン。内臓以外透明なアンドロイド・宿敵「クリスタルボーイ」。そして登場する女性たちは何故か皆そのスーパーボディに大事な所がやっと隠れるくらいの黒光りする皮製の布しか着けてなかった。斬新なアイデアとデザインが一杯、ゴージャスなSF冒険絵巻とはこういう事を言うのか!私はたちまち夢中になり単行本を揃え始めたものだ。ただ一つ困った事はあった。当時の小学校で「コブラ」を持ってるとばれれば、クラスの皆に「エッチ」「変態」と言われる事は火を見るよりも明らかだったのである。しかしそんな障害は私のコブラ熱の前にはものの数ではなかった。そして今思うと「コブラ」は人格形成期の少年に必要な沢山の事を教えてくれたのである。SF。ジョーク。そしてエロスを。
 しかしそこまでならここにわざわざ書く事もなかったかも知れない。「コブラ」は第8巻にて一旦連載を終了。その後はネタを思いつくと短期集中連載で中篇を描くというスタイルに移行。第9巻「黒竜王」(超名作)から実にハードなSFへと内容をグレードアップ。「マンドラド」「かげろう山登り」などを連発して、作品としての質を確立していくのである。
 「コブラ」以降、
「ゴクウ」「ブラックナイト バット」「鴉天狗カブト」「武TAKERU」などを描いてるが、はっきり言って全部いっしょ。ただ、最近の作品はパソコンでCG使って描く事にばかり気がいってストーリーの方がややおろそかになってるのが惜しい。
 そんな寺沢武一だが、実は虫プロに投稿した原稿がスタッフに捨てられてたところ、たまたま原稿を見た手塚治虫自身に拾われた、という経歴を持つそうだ。そんな彼の手塚に対する尊敬は半端ではない。「コブラ」は寺沢武一のライフワークであり、いまだ完結はしていない(多分この先も)が、彼はきっと手塚にとっての「ブラックジャック」のような作品にしたいと思ってるのではないだろうか。

寺沢武一公式サイト「Manga Magic Museum」  http://www.buichi.com/

「コブラ」 「ゴクウ」 「武TAKERU]
↑全部いっしょ。