エスパイ
(1974年東宝)
小松左京原作 福田純監督
藤岡弘 由美かおる 草刈正雄 加山雄三 若山富三郎 内田勝正

 

私が少年の頃、街は超能力であふれていた。バビルU世が教えてくれたサイコキネシス・テレパシー。学校から帰るとNHKでは眉村卓の「タイムトラベラー」。多岐川由美なら「七瀬ふたたび」。ユリ・ゲラーがTVの視聴者にパワーを送り、スプーン曲げ少年が現れた。テレキネシス(念動力)、テレポーテイション(瞬間移動)、透視、千里眼。超能力華やかなりし頃。

振り返ると超能力は決して便利な物ではなかった。しばしば追い詰められた時や命の危険に晒された時しか使えなかったり、エネルギー源である精神力がすぐ底をついたりしたものだ。いきおい、超能力合戦も普通の人間同士の争いとさほど変わらない土臭いもので、通常の人間から成る組織に追い詰められたりするのが常だった。怖がられて差別されたり、狙われたりする元になるので超能力者であることを隠してる者も多かった程だ。激しく見つめると「シャキーン」とか念動のピントが合った音が、しかしその効果は、引き金を引けないようにしたり、物を飛ばしてぶつけたりと間接的だった。

時は流れて「北斗の拳」や「ドラゴンボール」の時代になると超能力者でもないのに、ただ「強い」を極めただけで手からバズーカ砲が出たり、空を自由に飛んだりする。日本人は超能力を必要としなくなり、たやすく超人という神になってしまった。

平尾昌晃作曲、山口洋子作詞、尾崎紀世彦歌によるSFに似つかわしくないムード歌謡「愛こそすべて」で始まり終わるこの映画は、当時超能力がサイエンスなどという高尚なものではなかった事、バブル景気に向かってひた走る以前の「身の程」というものを知っていた日本人の超能力が見られる。

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