原作 : 安部公房
監督 : 勅使河原宏
砂の女

日本屈指の恐怖女優岸田今日子。中村ゆうじやラサール石井と深夜番組に出て自分の事を「キョンキョン」と呼んだり、御家人斬九郎に小言をいったり、吉行和子、冨士眞奈美と組んで仲良しぶりを見せつけてみても、岸田今日子の恐怖度は和らぐどころか、今日いよもって増すばかりである。その怖さは「化け猫女優」として固定してしまったとか、貞子のイメージが抜けないとか、そういった類のものではなく、岸田今日子という人自身が怖いのだから凄過ぎる。怖い映画に岸田今日子が出るのではない。岸田今日子が出てるから怖い映画になるのだ。

そんな岸田今日子にも若い時がある。色気を匂わせてた時もある。そしてその色香はやはり恐怖を際立たせるための大きな要因と化してしまっているのだった。

あの、小説「砂の女」を天才芸術家勅使河原宏が映像化してしまうという、そもそもがジャスゴーな企画。しかもモノクロ。蟻地獄の底にある一軒家に住む女。そこに落ちて来た男は砂のせいにしながら、女のせいにしながら、段々と元の世界への帰還を放棄して行く。食卓の上にさしてある傘にも何処からか降ってくる砂のパラパラという音が耳について離れなくなる。怖い。

岸田今日子が楳図かずおの「ヘビ女」になってる夢を見た事がある。下半身が鱗も艶やかな大蛇と化した岸田今日子に館中を追いまわされたのだが、実に怖かった。あの口元はまさに「ヘビ女」のそれだった。そんな夢を見たのも、TVで岸田今日子がろくろ首を楽しそうに演じている「学校の怪談」かなんかを観たせいだろう。岸田今日子は自分の怖さを知っている。そしてそれを楽しんでいる。そこがまた手強いのだ。

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